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首を振った

乗り換えましょう

菊の種をまく時期康泰旅行社が来ていた。この冬、庭の小菊から種を採っておいた。
  立ち枯れた花から採った種は、すべて発芽してくれるだろうか・・・。
  あの丘を、黄色い小菊でいっぱいにしたかった。チェヨンが目覚めたとき、ウンスに気付く
  ように・・・。自分の想いを伝えたかった。
  そして、ソウルから持って来た、アスピリンの瓶・・・あの人が、倒れていた場所に。
  いまでも鮮明に覚えている。思い出すと、身体が震え上がるほどの恐怖に襲われる。
  
  ああ、ダメよ。そんなことを、考えたら・・・まだまだ、やることが残っている。
  弱気になったら、前を見られなくなるわよ。ウンス・・・アジャ、アジャ!!

  診療室の前庭の縁台に、腰掛けていたが、いきなり立ち上がり、自分を励ますように
  声に出してみた。

  「ファイティン!ウンス。負けるな!ウンス。」
 
  ちょっとは、効果があったかな・・・そんなことを、考えていると、いきなり声がした。

  「ウンス殿、なにを・・・あなたは、いつも・・・ハハハハッ。」

  テジが笑っていた。ウンスは、少しばつが悪かったが、仕方ないと・・・テジに笑顔で答 
  えた。

  「テジさん、いきなり・・・ずるいわ。独り言よ。独り言。」

  「ほんとに・・・ウンス殿の独り言は、声が大きいのです。」

  「はは・・。そうなの。子供のころから、よく言われていたのよね。一人っ子だから、
  かもね・・・一人遊びの時の癖よ・・・きっと・・・たぶん。」

  「そうですか。では、そうしておきましょう。」

  ウンスは、まじまじと、テジをみつめていた。最初の印象は、トルべのように感じた。
  いまは、誰?いつも優しく笑いかけてくれる。先生・・・チャン先生だわ。
  
  「ところで、ねえ、テジさん。この前にお話しした子菊の・・・。」

  「はい。そろそろ時期ですね。行きますか?」

  「ええ。お願いできますか?やはり、一人では・・・。」

  「お一人では、危のうございますよ。ご一緒いたします。」

  「はい。お願いします。用意してきます。じゃあ・・。」

  去って行くウンスの背中をテジは、見ていた。あの華奢な身体のどこに、勇気と知己を
  隠しておられるのだ。ふと、お見せになる悲しみや苦悩を、癒やしてやりたい。
  だが・・・きっとウンス殿は、拒まれるだろう。

  


  ウンスが、準備をして待っていると、テジが馬四頭を引いてきた。

  「テジさん、四頭もどうするの?」

  「一気に馬で駆けてしまおうかと、そうすれば、あちらで時間をかけられます。」

  「そう・・・どうやって、行くの・・その三頭つないで・・・。」

  「ああ、方法ですか?俺が、2頭を引いて騎乗します。手綱をまとめて握って走ります。」

  「ねえ、それって・・・私にもできるかしら?」

  「どうでしょうか・・。ドンベクは、三頭くらいなら、ひきますが・・・慣れですが・・
  そうですね・・・良い機会ですね。練習がてら参りましょうか。」

  「ねえ、時間・・・掛かる時間ね・・・早くなる?」

  「一頭を引いて・・・そうですね・・・西京あたりなら二刻もあれば着きます。」

  「わあ。すごいわね。ね。ね、追いてけぼりにしないで、教えてね。」

  「はい。はい、わかましたよ。いいですか・・。」

  ウンスは、馬に跨がりながら・・・テジを急に呼び止めた。

  「??途中で乗り捨てた馬は、どうなるの??」

  「急に振り返ると、あぶないですよ。馬は、ちゃんと帰りますよ。帰巣本能ってやつ
  です。」

  「ふう~ん。そんなものなのね・・・。」

  ウンスは、関心しきりだった。

  馬を引いて騎乗することが、できれば・・・考えるだけで、ワクワクした。
  ただ、これは、いうほど簡単ではなく、暫くは、ゆっ 併走の馬をきにしつつの
  騎乗になった。
  しかし、一刻も経ったころには、慣れ始めた。大同江の河口のあたりからは、早駆けが
  できるようになっていた。
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コメント

1. 無題

作者への謝罪とブログの閉鎖を。

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